*** 計画分娩ってなんだろう? その3 **
この章では、計画分娩の適応について考えたいと思います。
計画分娩の適応には大きく、医学的適応と社会的適応があります。
医学的適応は、お母さんや赤ちゃんの合併症やリスクの観点から、計画分娩にすることが好ましい場合のことです。
実際に医学的適応で行う例としては、こちらの表に記載されたものがあります。
社会的適応は、病院や患者さんの都合で行う場合のことです。
病院の都合とは、マンパワーが十分にある、日中の時間帯でなるべく分娩をすすめたいというものです。
病院によっては、夜間に無痛分娩を行う十分な人手がなく、日中は計画分娩、夜間は緊急のみで対応しているところがあります。
患者さんの都合とは、仕事や家庭の理由などで、なるべくこの日に出産したいというものです。陣発で駆け込んでバタバタとお産を迎えるよりも、文字通りスケジュールを計画して分娩したい時に選択されます。
これらの社会的適応の計画分娩も、施設によって取扱いされていますが、日本での誘発分娩には、いくつかの問題があります。
一つは、プロスタグランジン製剤による経管熟化が保険認可されていないということです。
すでに欧米ではプロスタグランジン製剤が、多くのエビデンスのもとで使用されていますが、日本での使用は未だに限定されています。
代わりにメトロインテルやラミナリアなどの、器具を用いた頸管塾化が使用されていますが(***計画分娩ってなんだろう? その2***)
参照)、実はこれらの器具による方法は、文献的考察がほとんどされていません。
もう一つは、子宮収縮剤であるオキシトシンの投与量に上限が設定されているということです。
投与量をマックスにしても分娩が停止した場合、誘発失敗で帝王切開に移行します。実際に、計画分娩の帝王切開率は、通常の2倍程度といわれています。
いずれにしても、計画分娩自体、未だにエビデンスが乏しいのが現状です。
なぜなら、日本と同じような事情で、社会的適応の計画分娩を行っている国は少ないからです。
欧米では、自然陣発による無痛分娩をする環境が日本より整っているため、社会的適応による計画分娩をわざわざ選択する必要性が少ないのです。
今後日本でも分娩の集約化が進み7、誰もが自然陣発で希望した時に無痛を開始できる環境が整っていく必要があります。(***日本は無痛後進国***)
今後も計画分娩についての文献は出てくるでしょうが、その都度mapaternityで紹介できればと思います。
いかがでしたでしょうか。
計画分娩の適応について、日本での事情を踏まえてのお話でした。