*** 麻酔科医がやっていること ***
麻酔科医は無痛分娩の管理中どのような管理をしているのでしょうか?
硬膜外麻酔による無痛分娩の場合についてお話しします。
まず基本は監視とモニタリングです。
分娩中はお母さんのバイタルサインと、子宮収縮の状態・赤ちゃんの心音を継続的に図っています。これらのどこかに異常があれば、迅速な対応が求められます。
また硬膜外のカテーテルは、通常テープで固定しているのですが、人によっては皮下組織の性状や、体の動きで自然と抜けてくる方がいます。逆にカテーテルが皮下に入っていく人もいます。
このカテーテルの入っている深さは、回診時に麻酔科医が観察する項目のひとつです。
深さだけでなく、刺入部が出血していたり、腫れていたりなどの異常がないかも確認します。
それでは痛みの管理はどのようにしているのでしょうか?
お母さんにどのあたりが痛いのかを確認します。
お腹・腰・お尻のほうのうちどのあたりが痛いかを聞くことで、薬の拡がりが悪いところを予測します。
この痛みが強い場所と程度は、分娩の進行によっても変化していきます。
最初はお腹や腰のあたりが痛みますが、分娩が進行するにつれて、お尻の方に痛みが移動してくるのです。
よく痛みがとれていて、cold testで薬の拡がりがよいようであれば、そのまま様子をみることが多いです。
もし痛みが十分に取れない場合は、状況によって色々な対応をします。
1) 薬の拡がりが悪い場合
薬を追加して、効果領域を拡げます。
2) 薬が拡がっているけど、痛みが強い場合
濃い濃度の薬を入れて、鎮痛効果を高めます
3) 体の片側半分だけ痛む場合、痛みに左右差がある場合
痛いほうを下にした体位で薬を追加します。重力を利用して、効果が不十分な方に薬を広げます
4) それでも痛みがとれない場合
カテーテルの位置が適切でない可能性があります。
通常カテーテルは硬膜外に4cmほどいれることが多いですが、カテーテルの入り具合を浅くすることで状況が改善することがあります。また、薬が十分拡がっていても、分娩が急速に進行した場合、鎮痛効果が追い付かない場合があります。いろいろ対策を講じても鎮痛が不十分な場合は、カテーテルの入れ直しが必要になります。