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『 日本は無痛後進国 』 麻酔科医情報サイト

 

 

*** 日本は無痛後進国 ***

日本は無痛後進国です。

日本における、無痛分娩は多くのニーズがあるにも関わらず、諸外国と比べると、残念ながらかなりの遅れをとっています。

 

アメリカやフランスでは8割以上が硬膜外麻酔による無痛分娩を選択しています。アジア圏も含めた多くの先進国でも、15%-60%と、普及率に幅はあるものの、希望をすれば無痛分娩を受けられる環境が比較的整っています。

 

対して、日本における無痛分娩の割合は4-5%未満と、非常に低いのが現状です。

 

これにはどんな背景があるのでしょうか?

大きなものとしてそこには

「お金の問題」「文化的な問題」「世間の問題」「医療施設の問題」

があります。

 

お金の問題

先述したように、日本では無痛分娩は保険医療として認可されていません。そのため、一般的に無痛分娩では数万-20万円の費用がかかります。この費用については、施設によっても大きく異なります。

 

経済的に余裕のないご家庭では、無痛分娩は難しい選択であるかもしれません。

 

文化的な問題

日本人は苦労や我慢を美徳とするような傾向があると思います。

 

本人が無痛に興味があったとしても、お義母さんや回りからの、プレッシャーがかかるケースがあります。

 

「わたしの時は痛みを我慢して生んだ」

「痛みを乗り越えてこそ母親になる」」

 

もちろん人の考えはそれぞれですし、人生において絶対に100%正解の選択はありません。

 

ただ出産の当事者は、お母さんなのです。

 

周りの意見を聞いたり、相談することも大事ですが、

最終的にどうするかは、当事者であるお母さんが決めることです。

お母さんの選択の自由を奪ってしまうような雰囲気は、変えてゆかなければなりません。

 

世間の問題

 

人は知らないもの、未知のものに対して、抵抗や不安を感じるものです。

特に、最近は無痛に関する事故が、ニュースで取り沙汰にされていて、世間の不安や不信感を煽っているように見えます。

 

ここで注意しなければならないのは、

<無痛分娩自体が危険>なのではなく

<管理体制が整っていない無痛分娩にはリスクが伴う>ということです。

 

無痛分娩を常に安全に提供できるよう努力している施設はたくさんあります。

 

「それじゃあ安全に無痛分娩ができる施設はどうやって選べばいいの?」

 

その答えについてはまた後ほどお話したいと思います。

 

医療施設の問題

 

海外では、分娩は大きな施設に集約化していて、麻酔科を含め医療者が24時間対応できるようになっています。

 

対して、日本では分娩を扱う施設が分散していて、各施設の分娩数自体も少ない傾向にあります。

 

そのため、各地域における、無痛分娩の需要と供給のバランスをとることが、難しい状況にあります。

 

都心の比較的富裕層の集まるような中規模病院では【需要>供給】となっていることが多いのに対して、

過疎地域では、無痛分娩を選択したいけれども、残念ながら経済的な余裕がないなどの理由で受けられない患者さんもおり、【需要<供給】となっていることもあります。

 

今後、日本でも、お産が大病院に集約化していき、そこに環境整備やマンパワーが集中させることができるようになれば、これらのバランスは改善していくでしょう。

 

 

いかがでしたでしょうか?

上に挙げた4つの問題は、いずれも簡単に解決されるものではないかもしれません。

できるところから少しずつでも改善に向かうことで、日本における無痛分娩が普及していくことを願っています。

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