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『 無痛分娩の種類 』  麻酔科医情報サイト

 

 

*** 無痛分娩の種類 ***

この章では、無痛分娩の種類についてご紹介します。

無痛分娩の種類には大きく

硬膜外麻酔、脊髄クモ膜下麻酔併用硬膜外麻酔、レミフェンタニル麻酔、笑気麻酔

があります。

どういったものなのか、一つ一つご紹介していきます。

 

  硬膜外麻酔

背中の硬膜外というスペースにカテーテルを入れて、そこに局所麻酔薬をいれることで痛みをとる方法です。

無痛分娩のなかでも最もスタンダードな方法です。

最初にカテーテルを入れる場所の皮膚に細い針を使って処置のための痛み止めをします。
その後、カテーテルを入れるための専用の針を使って、硬膜外腔を探ります。
背中の奥の方が押される感じがして、場合によっては少し痛みを感じますが、ここが頑張り時です。姿勢がうまくとれないと、なかなかいい場所が見つかりにくくなってしまいます。

硬膜外腔がみつかったら、細いカテーテルを通していきます。
少し背中がもぞもぞするようなかんじがあったり、足にビンと響くようなかんじがあるかもしれません。
カテーテルが無事入ったら、そこから試しのお薬を入れていきます。

この時もしカテーテルが血管に中に迷入していると、舌がしびれるようなかんじや金属の味がすることがあります。また、硬膜外の更に内側の、脊髄くも膜下腔という場所にカテーテルが入っていると、足がポカポカして動かしづらくかんじてきます。

きちんと硬膜外にカテーテルが入っているかを確認するために、担当麻酔科の先生は、こういった症状がないかを聞いてきます。

テストが終わって異常がなければ、テープで固定して終了です。

背中という自分の見えないところで処置が行われるので、少し恐いかんじがすると思います。何かするときは必ずお声かけしながら処置を進めます。

無事カテーテルが背中に入ったら、本格的に局所麻酔薬と麻酔補助薬を使って、痛みを取るためのお薬を拡げていきます。
薬の拡げ方や、その時の分娩の進行具合にもよりますが、おおよそ痛みが落ち着いてくるまで、30分以上はかかると思ってください。

お薬を拡げやすくするために、お母さんには、左右を向いてもらったり、仰向けになったりと、体位を変えてもらうようにお願いします。

背中のお薬の拡がり方は、重力の影響を受けるためです。

薬の拡がりがどの程度か知るために麻酔科医は、氷やアルコール綿を使ってcold testという確認の方法をとります。麻酔が拡がったところでは、冷たいとか触られたといった感覚が、鈍くなるのです。

 

  脊髄くも膜下麻酔併用硬膜外麻酔

上記の硬膜外麻酔に、脊髄くも膜下麻酔を併用する方法です。
脊髄くも膜下麻酔を併用することで、痛みがより早くとれます。
経産婦で、分娩の進行が急だったり、子宮口が全開大に近くて痛みが強い場合は、この方法がより効果的となることがあります

ただし、肥満の方、赤ちゃんの心音に異常が出ている方、帝王切開に移行する可能性が高い方では、適用となりません。
硬膜外腔を見つけるところまでは、硬膜外麻酔のやり方とほとんど一緒で、そこからさらに、脊髄くも膜下腔に細長い針を使ってお薬を入れていきます。すると足がポカポカして感覚が鈍くなる感じがでてきます。その後、硬膜外麻酔の時と同様に、硬膜外にカテーテルを入れてきて、処置は終了です。

 

 レミフェンタニル麻酔

超短時間作用型の麻薬、レミフェンタニルという薬を機械を使って静脈投与する方法です。

背中の麻酔のような処置を必要としませんが、副作用として呼吸抑制という問題点があります。

人は基本的に痛いと呼吸が増えますが、痛くないときは逆に呼吸回数は少なくなります。

陣痛は、波のように間歇的に押し寄せる痛みです。

陣痛がひどくない時にこのレミフェンタニルが必要以上に入りすぎると、お母さんの呼吸が止まってしまい、危ない状態になる場合があるのです。

 

何らかの理由で硬膜外麻酔が使えないようなお母さんに対して有効な可能性がありますが、他の麻酔と同様、厳重な監視モニタリングが必要となります。
このレミフェンタニル麻酔も発展段階なのが現状です。

 

 笑気麻酔

笑気麻酔というガスによる麻酔です。
笑気を吸入すると顔の筋肉が緩んで笑ったように見えることから、このような名前がついたとされています。痛みを感じたときに、マスクでこの笑気を嗅いで、痛みを和らげます。

 

イギリスやオーストラリアなどでは半数以上の分娩で普及していますが、アメリカではほとんど使用されておらず、国によって温度差があります。

日本でも、今のところ、ほとんどの施設で導入されていません。

 

硬膜外麻酔に比べると笑気麻酔による鎮痛効果は低いですが、不思議なことに、分娩後のお母さんにアンケートをとると、笑気麻酔での無痛分娩の満足度は、比較的高い結果となっています。満足度は、痛みの改善具合だけでは決まるものではないということです。

 

赤ちゃんへの影響はどうでしょうか。

 

ある研究によれば、赤ちゃんが生まれたときの状態の良さを表すスコアである「アプガースコア」への笑気の影響は一時的で、明らかな副作用はみられないとされています。

この笑気の吸入器は、オペ室のどの麻酔器にも大抵ついていて、普段は短時間の体表面の手術や、子供の麻酔の導入、全身麻酔の帝王切開などで使用しています。
分娩室で使用すると、低濃度ではありますが、分娩室自体が笑気で汚染されるため、医療関係者や家族への不必要な暴露が起きるという問題点があります。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

現在のところ、日本では無痛分娩といったら、

硬膜外麻酔、または脊髄くも膜下麻酔併用硬膜外麻酔が選択されるのがスタンダードです。

この章では無痛分娩の種類についてまとめました。

 

 

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