*** 妊娠中の手術麻酔 ***
妊娠中のお母さんも様々な手術を受けることがあります。
その中でも比較的よく行われるのが、盲腸や胆のう炎などの手術です。
妊娠中の手術の麻酔では、妊娠週数が重要となります。
妊娠10週までの赤ちゃんは胎芽と呼ばれる時期で、様々な器官が形成されます。
この時期が最も催奇形性のリスクが高いので注意が必要です。
器官形成期が過ぎれば、赤ちゃんへの影響はより少なくなりますので、よほどの緊急手術でなければ、この期間の手術麻酔はなるべく回避します。
それ以降は、手術のリスク・ベネフィットを天秤にかけて、行う時期を決定します。
もし背中からの麻酔(硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔)や、神経ブロック(超音波ガイド下に四肢や体幹に局所麻酔薬をまく方法)で可能な手術であれば、全身麻酔はなるべく行わないようにします。
全身麻酔は、安全な範囲とはいえ赤ちゃんが薬に暴露する量が多くなること、また挿管のリスクがプラスされることがその理由です。
全身麻酔が避けられない場合は、全身麻酔を選択します。
妊娠中の全身麻酔では、挿管困難のリスクが通常よりも高まることや、胃の運動の停滞による誤嚥にも注意が必要です。
いずれにしてもお母さんとお腹の赤ちゃんにとって最も安全な方法を選択して、麻酔方法を計画しています。