番外編
*** 美容医療の麻酔について ***
著者は、美容麻酔の安全管理にも取り組んでいます。
みなさんも今までに、美容医療における死亡事故のニュースを聞かれたことがあるかと思います。
実は、これらの事故のほとんどが、稚拙な麻酔方法によるものなのです。
美容医療において、サージカルな要因(外科的な手技のせい)で死亡するケースは実は滅多にありません。
某クリニックで、脂肪吸引における腸管穿孔(脂肪を吸引するための器具で誤って腸を傷つけたこと)による敗血症で死亡したケースは、サージカルな原因ですが、過去にあったそれ以外の事故は、麻酔の要因によるものが大半です。
しっかりとトレーニングを受けた麻酔科医であれば、絶対にやらないようなミスを、麻酔の知識や技術のない医師が、自分の判断で麻酔をかけることで、冒してしまっているのです。
手術に集中しながらも安全に麻酔を管理するというのは基本的に無理なことであり、様々なリスクを伴います。
そもそも麻酔科医は、手術中の患者さんの命を守り、外科医が手術を快適にできるようにするため存在しています。
麻酔科医は、手術中の、命の最後の砦なのです。
美容医療自体は、人生に前向きになれたり、変化をもたらしてくれたりする、素晴らしいものだと、著者は考えていますが、本来やらなくても命に関係のない手術で、医療側の原因で患者さんが亡くなってしまうということは、本来絶対にあってはならないことです。
それでは美容医療における安全のため、麻酔科医ができることとはなんでしょうか?
1. 最適なプロトコールを作る
各手術における麻酔管理のマニュアル化をすることです。ある程度定式化することで、大きな間違いを防ぎます。
2 . 緊急時の対応を教育する。
手術にも麻酔にも、合併症はつきものです。想定外の合併症が起きたときに、予めどのような行動をとるかを伝えておくことで、最悪の事態を招くことがないようにします。
3 . 施設にあった物品管理をする
対応策があっても、それを実行に移せるための道具、あるいはそれに気づけるためのモニターがなければ、事故は防げません。それぞれの施設にとって必要な物品をセレクトし、それを使用可能にする必要があります。
以上のことをコンサルティングすることで、美容医療の麻酔における安全性は向上できるものと考えています。
美容医療で、悲劇的なニュースが今後世間で起こることがないように、願ってやみません